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1日5回観た日もある『ちりとてちん』
2007年/脚本:藤本有紀

昨年深夜に再放送でやっていて再び観た。2回目ともなると感動も少し薄まって冷静に観ることができた。
これはNHK朝の連続テレビ小説であるが、私の中の朝ドラのランキングでは最も優れた作品となっている。

朝ドラとしては珍しく、ヒロインの人物像として、何をやってもうまくいかず、すぐに投げ出し、劣等感の塊で後ろ向き、勝手にライバルとしていた人気者で同姓同名の同級生を疎ましく思っている、というやさぐれた人物であるが、そんな少女がそこここでつまずきながらも、独自のアンテナでたぐり寄せた物が「落語」で、その先にも更に何かをたぐり寄せる。

この劣等感の塊の娘は家族や友人、一門の師匠や兄弟子達、近所の人々に支えられながら成長して行くのだが、この周りの人々にもそれぞれに深みのある人物像があり、愛すべき人々であるというのもいつもの朝ドラとは違った。

そしてこの周りの人々の中で最も際だっていたのが、渡瀬恒彦演ずるところの師匠徒然亭草若で、この人物は、主人公である徒然亭若狭/和田喜代美はもちろん、その他の弟子達のことを実によく見ていて、彼らの最大の理解者となり、絶妙なアドバイスと関わりあいで、それぞれの潜在的な良さを引きずり出す。

一般的にはダメなところとして見なされてしまう部分を良いところとして見いだしてくれたり、ここを見て欲しいと思っている部分を鋭く突いてこられる。つまり自分のことをよく見てくれているし、自分以上に解ってくれている、ということになり、これは正に理想のパートナー像ということになり、もし私が喜代美だったらこんな上司を持ったなら、尊敬の眼差しで崇めると共に、確実に恋してしまうであろう。物語では主人公喜代美は兄弟子の草々といい仲になるが、何度「師匠にしとけ!」と心の中で叫んだか。 
自分もかなりの劣等感の塊であるから、彼女の後ろ向きなねちねちした感情や、心の迷いは手に取るようにわかり、そこに正に自分がいるかのような勢いで観ていたので、この神のような師匠の温かいお言葉に毎回感動の涙と鼻水を流した。
こういう脚本は女性にしか書けないと思った。

当時、朝ドラはNHK3局で朝7:30のBSハイビジョンから始まり、夜7:30のBS2まで合計5回放送されていた。
この感動を何回も何回も体験したく、1日に5回放送を観たこともあった。

ほぼ中毒だった。
| TV | 2011.04.21 Thursday 19:08 |