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隔たりの基準をとりあえず世代間として
「アカルイミライ」
アカルイミライ [DVD]2003年/監督・脚本:黒沢清
自分は割と一般的な物の見方をする方だろうと思っていたけれど、それはそうかもしれないし、そうでもないかもしれない。
一般的であることとそうでないことの境界線、善と悪との境界線も極めて曖昧であることがわかる。

工場で働く危なげな青年の身の回りで起こって行く、価値観のズレによる不穏や犯罪。
不穏な空気と効果音が流れ、観ている自分は、物語がより一層闇に向かって行くだろう、辛い話になってしまうぞと、より暗い方向に向かっているとする。そこに不意に開放的な効果音が流れ、物語は自分とは真逆の方向に進んで行ってしまう。
一瞬置いて行かれる。
見る角度をそこで微調整する。流れに順応すると、その罪や死は許容される。晴れ晴れとした気分で観ている自分がいる。
境界線などというものは無数にあるから正解などない。結局自分の位置をどこに置くかということ。
幾度か置いて行かれて、不思議な気持ちになった。
| cinema | 2011.03.02 Wednesday 15:52 |
ある意味ドキュメンタリー「劔岳 点の記」

劔岳 点の記 メモリアル・エディション [DVD]2009年/監督:木村大作
明治39年、陸軍参謀本部陸地測量部によって日本地図は完成されつつあったが、あまりの険しさで未踏峰とされ、測量できていなかったという剱岳。この日本地図最後の空白地帯を埋めるために信念と勇気をもって困難な山岳測量に取り組んだ男たちを描いた壮大な物語。

が、これは物語というよりドキュメンタリーではないか。
公開当時、NHK FMのラジオ深夜便の番組に監督の木村大作氏が出演しており、声でかく興奮ぎみに熱きキャラを放出していた。あまりにも壮絶な撮影現場の話、可笑しかった。
もともと日本映画の数作品の撮影監督を手掛けるキャメラマンだったこの監督は、新人だった頃に黒沢明監督の映画にも参加し、“本物”を撮ることに執着しまくる現場を刷り込まれている。

“本物”を撮るために、俳優は本当に撮影現場に登って行く。快晴待ち、嵐待ち、季節待ち、雲海待ち・・・自然と山の状態が大優先でそれに合わせて俳優含むスタッフは、劔岳に呼び出される。そして登る。そのシーンを撮るために俳優は山際の雪がせり出した、雪の下に地面があんだかないんだかわからない所に立たされ、遠くからカメラを回す監督からもっと先まで行けと指示される。
壮絶な映画を撮るために、スタッフ一同も壮絶な時間を辿っている。

実際に本編を観たらば、あまりにも本物過ぎて実際壮絶であろう部分はもうサラッと、その壮絶な所はもうちょっとじっくり撮って感動を呼ぶシーンとなるのではないかと思うところはサラーッと過ぎる。或いは、いよいよクライマックスの壮絶なドラマがこれから!というところで「そこないんかい!」とか。
逆にそのドラマもへったくれもないところが“本物”を撮るがための壮絶さを思わせる。
私は完全にこの映画を撮っている現場のドキュメンタリーを観ている目線になっており、ああそうだね、そんな危険なところで俳優が格好つけて迫真の演技をしたり、緊張のどアップを撮影したりどころじゃないよね。などと優しさに溢れて見守ってしまう。

やはりキャメラマンである監督、ドラマなんてどうでもよいのだろう。とにかく、この劔岳の壮大な画を記録したかったのだろう。この素晴らしい大自然の中に、佇まいも凛々しい浅野忠信や中村トオルが、点のようになって歩いている。ありえない美しさ・・・だから許せる。
観終わって、劔岳には決して登りたくないと思った。

| cinema | 2010.06.30 Wednesday 23:59 |
作品の映像、映像の作品「アニエスの浜辺」

アニエスの浜辺 [DVD]2008年/フランス/監督・脚本:アニエス・ヴァルダ
 
ヌーヴェル・ヴァーグの女性監督、アニエス・ヴァルダ。81歳になった彼女自身の人生を辿る映像。
子供時代を過ごしたベルギーの浜辺。疎開した南フランスの港町セート。夫である映画監督ジャック・ドゥミと渡ったアメリカ西海岸。それぞれの地での出来事、出会った人達のこと。

ベルギーの浜辺に立てられた無数の鏡に映されたスタッフ、砂浜と海と空、光の乱反射、彼女自身。風で彼女の首に巻かれたスカーフが彼女の顔に覆い被さるのを「本番でもこうなればいいわ」と云う。

彼女自身が語る。当時の映像が繋がれ、モノクロ写真をコラージュしながら、かと思えばいきなり色彩豊かな再現映像にすり替わる。
いくつものインスタレーションが映像となって折り重なっている。独特の感性で、思うままに、自由自在に、プチッと切り取る。ブツッと切ってペッと貼り付けたような荒っぽい繋ぎ目が、とても女性らしく思える。少女のようなおばあちゃんです。
| cinema | 2010.05.27 Thursday 19:03 |
カッコええだらけ「SOUL RED 松田優作」

SOUL RED 松田優作 [DVD]2009年/監督:御法川修 

昨年没後20年、生誕60年を迎えた松田優作の熱き俳優人生を綴ったドキュメンタリー映画。
当時の映画で関わった監督やプロデューサーなどのスタッフや、憧れて育った世代の俳優などの証言はとても興味深かったけれど、当時共演していた同世代の俳優の証言がなかった。「ブラック・レイン」で共演したアンディ・ガルシアの出演に頑張ったのか。
アンディ・ガルシアは「ゴッドファーザーPART III」のニョッキのラブシーンばかり思い出すが、「ゴッドファーザーPART III」が「ブラック・レイン」の後に制作されているというのも不思議な感じだ。それほど松田優作が逝ったのが昔のことだったということ。

最後に息子の松田龍平と松田翔太も個々に父、松田優作について語るのだが、熱く語る他の証言者たちとの温度差が著しい。あまり会ったことがないのでよくわからない・・・という感じが。居眠りした・・・

それにしてもやっぱカッコいい、松田優作。
| cinema | 2010.05.26 Wednesday 21:14 |
馬はいいべ『雪に願うこと』

雪に願うこと プレミアム・エディション [DVD]2006年/監督:根岸吉太郎 
馬がいい。この話は、“ばんえい競馬”の厩舎を手伝うことになった心折れた青年が再生するまでのドラマだが、この“ばんえい競馬”の馬“輓馬(ばんば)”と呼ばれる馬が特にいい。というか馬が主役といってもよいかもしれない。

このばんえい競走馬というのは農耕馬として利用される種の馬で、足がガッチリしていてとても筋肉質な馬であり、競馬では騎手と500kg以上もの重量物を積んだ鉄製のソリを引いて、二カ所の障害(坂というか小山)を含んだ200mのコースを競う。
速けりゃいいってもんではないようで、とにかく重い物を引きずっているので、持久力も必要となるようだ。途中で力尽きて立ち止まってしまう馬もいる。馬のやる気と闘争心にもかかっている。

障害の小山を乗り越えるのが難関で、小山の頂点の寸前で足を折り曲げて膝をついて頑張っている子がいたりするのが痛々しく、もう見ちゃいられないと思ってしまう。
1年を通して成績がふるわなければ馬肉にされてしまうという。それを最初に聞いた勢谷友介扮する青年は「そんなの馬はわかんないッスよね」と言った。でも話が進むうちに馬はわかってるってことがわかってくる。青年が世話をすることになる馬ウンリュウは馬刺寸前の崖っぷちだった。

いろいろ複雑な気分になるけれど、とにかくウンリュウがかわいらしく撮れている。目がかわいい。たてがみがかわいい。普段はおろしていてナチュラルヘアスタイルで、レースの時はキッチリ編み込みスタイルになっている。
中盤で伊勢谷友介に対して好意を示す仕草をするシーンがある。なんか羨ましかった。あんな目をした馬に好かれたらさぞ嬉しかろう、かわいかろう。

真冬の早朝の凍るような青い空気の中、馬たちの重量を引く訓練をしている。馬の大きな鼻息と全身から発散する白い湯気が濛々と立ちこめて、力強く本当に美しい。
| cinema | 2010.02.19 Friday 22:48 |
乙女心とおっさん心で観る『探偵物語』

探偵物語 デジタル・リマスター版 [DVD]1983年/監督:根岸吉太郎 
映画「探偵物語」がとても好き。薬師丸ひろ子主演の映画として、この『探偵物語』と『セーラー服と機関銃』と『翔んだカップル』という成長しかけのところばかり見ているのでかなり偏っているかもしれないが、先ずは薬師丸ひろ子が本当にかわいい。
元気でハキハキしていて好奇心いっぱい、色気がないけれどもかわいい。かわいいのに色気がない。裏表を感じさせない純真無垢なオーラがおっさんに夢を与えてくれる。

そしてお嬢様女子大生の薬師丸ひろ子のボディガードとして雇われた私立探偵の松田優作。初めのうちは存在を知られながらも、後をつける形で任務を遂行しているが、途中からは行動を共にする。
このようなかっこいい大人が探偵で、毎朝屋敷の門の前で待っていて、日中はずっと後からつけてくる。いけない虫に食われそうになったら邪魔してきたり、思いを寄せる大学の先輩の住所を簡単に調べてくれたり、チークを踊ってくれたり、夜の仕事をしている元女房が出てきたりしたら、二十歳やそこらのコムスメがふらっとならないわけがないだろう。私は薬師丸ひろ子の女子大生役に完全に乗り移って見ている。

特にいいのはやはり終盤の空港での長回しの名シーンである。ここの松田優作の演じる探偵辻山さんが本気かどうか、いや絶対本気だ。その辻山さんの本気さ加減を、乙女心とおっさん心で熱弁したい。
| cinema | 2010.02.18 Thursday 19:00 |
未来を写した子どもたち

未来を写した子どもたち(通常版) [DVD]アメリカ/2004年/監督:ロス・カウフマン、ザナ・ブリスキ

ドキュメンタリー映画。インド・コルカタの売春婦の生活を取材・撮影しようと、その地に滞在していた女性カメラマンが、その売春窟で暮らす子どもたちと触れあううちに、その子らに興味を持ち、写真を教えるようになる。

売春窟で暮らす人々というのは、特殊な環境であるため一般社会から隔離されているといったような状態だ。そこで生まれ育った子どもたちは、社会的な偏見や親の考え方、経済的な理由などいろいろな弊害が生じて簡単には教育を受けられない。
でも子どもたちの中には、教育を受けたいと思っている子どもはいる。教育を受けたいと思っても、どうしたら教育を受けることができるのか、その術を知らない、親も子も。それが教育を受けないということの悪循環ではないか。

子どもはそのまま大きくなれば、近い将来は売春婦、女たちの世話をする晩春窟の男になるのみ。それが親が子どもに教えられるただ一つの職業だからか。
でも本当はそうではない。なれる職業が一つしかないなんて嘘だ。この作品の監督である女性カメラマンのザナ氏は、この子どもたちに写真を教えながら、この売春窟から抜け出せる可能性があるということを教えた。子どもたちの撮った作品の写真展を開き学費を集め、学校に入学するための書類を集め、複雑な手続きに奔走する。

そんな悲劇のような環境に生まれ育った子どもたちであるが、普通に明るいし、屈託ない。でもやっぱり普通じゃない。
10歳〜14歳、インタビューに答える口調はめちゃめちゃしっかりしている。自分が今、或いは今後しなければならないことがちゃんとわかっている。写真について学ぶ吸収さ加減が尋常でない。
もともと画を描くのが好きだったりして芸術的センスが最も光っていたアヴィジットくんなんぞは、目つきがもうギラギラしているし、11歳だから日本でいうと小5か、小5でそんな撮り方するか?!!というようなアングルで撮ったりする。子どもたちの写真はイキイキし過ぎて、ジェラシーだ・・・

ザナ氏の苦労の甲斐あって、子どもたちへ学校の門は開かれるのだが、ここで彼らは究極の選択を迫られる。寄宿学校のため親元から離れなければならない。10年程の課程が終了するまで家に帰ることが許されないとか・・・人手がなくなるからと親から反対されている子もいる。一歩踏み出すには余程の覚悟がいる状況。こんな10歳やそこらの子が、そんなこと自分で決めなければならないなんてさ。
けれども、こんな極限状態に身を置いているからこそ、しっかりと意志を持って、目をギラつかせていなければ生き残って行けないのかもしれないし、そんなギラギラした子どもが育つのかもしれない。ぬるい日本とは明らかに違う。

映画の終わりに、子どもたちのその後(2年後)の動向がテロップで表示される。やっぱり現実はそう甘くないか・・・とがっくし来て帰りの車の中でいろいろ考えた。義務教育はいいことか、よくないか。ありがたいか、ありがたくないか。
家に帰ってから映画のパンフを見た。日本で公開されてパンフができた頃の、更に4年後の子どもたちの動向が書かれていた。やっぱりザナ氏の行ったことは響いていなくはなかった。あの子らや、その他のあの地の子どもたちや或いは世界の子どもたちの未来にも繋がっているのではないか。
映画館のお土産、パンフの文化は素敵だった。
| cinema | 2009.03.30 Monday 22:17 |
茶の味

茶の味 グッドテイスト・エディション2004/日本/原作・監督・脚本・編集:石井克人 とある田舎のとある一家の日常。皆それぞれにモヤモヤとした悩みを抱えている。
会話も映像もいかにも平凡な日常的に流れているが、よくよく聞くと全く平凡なんかではない。じいちゃんが元アニメーターってこと自体がもう普通ではない。いかにも平凡な日常的に流れている映像と会話は、見ていなければドキュメンタリーのような環境映像のような感じで自然に流れてしまうのだが、目を凝らして観ていると、あるいは耳をすまして聴いていると全てがヘンなのだ。で、なんかイイ。
ものすごい端っこのちっちゃいところや、ちっちゃいつぶやきなど、いちいち笑かしてくれるわ。ほのぼのと。
我衆院達也扮するおじいの全く意味のわからない「なんであなたは三角定規なの〜♪」のシーンのピラティスポーズをとる妹さっちゃんがタラコキューピーのようで非常にかわいらしい。そしてしばらくあの山を愛する歌『山よ♪』が頭から離れないであろう。
| cinema | 2005.12.18 Sunday 20:34 |
ビッグ・リボウスキ

ビッグ・リボウスキ1998/アメリカ/監督・脚本・製作:ジョエル&イーサン・コーエン 90年代初めのロス。元ヒッピーで職もなく毎日ぶらぶらだらだらと過ごしていて、似たようなぶらぶらした仲間とボーリングをするのが日課のようになっている男が、ある日事件に巻き込まれてどんどん状況が悪くなって行く。いい歳をして働きもせずぶらぶらしていて平気なぐらいだから、状況は確かにどんどん悪くなっているのだが、危機感というものがあまり感じられない。焦ってはいるが実にのんきだ。事件に巻き込まれる男デュードに、おせっかいにも助言やら助け船を出そうとズカズカとついてくるキレキャラのウォルターがたいへん疎ましい存在で、悪い状況にしているのは全て此奴のわけのわからない行動によるもので、なんでこんな奴と友達なんだよと観ている私もイラッとくるのであった。けれども最後の最後で、最後まで何一ついいことをしなかった奴だけど、憎めない奴なんだなぁとこの男達の友情がわかったような気がしたりもした。出てくる人物達のキャラの濃いったらない映画である。時々気を失った時に行ってしまう夢ワールドも濃い。
| cinema | 2005.11.20 Sunday 23:12 |
花とアリス

花とアリス 特別版2004/日本/監督・脚本・音楽:岩井俊二 幼なじみの女子高生、花とアリスと花の初恋の先輩ミヤモトの三人の三角関係。透明でかわいらしくて小学生の頃読んでいた少女漫画のようで、観終わった私の心は純白だよ。このDVDを借りてきて観終わったのが返却日当日の夜だったのだけれど、もう1回観たくて観たいシーンだけ観ようと途中早送りするもほとんど観たいシーンで結局ほぼ全部再度観てしまい、皆が寝静まった頃、夜な夜な返却しに行ったのだった。鈴木杏ちゃんもかわいいが蒼井優ちゃんが更にめちゃめちゃかわいい。『タイガー&ドラゴン』で毎回ご披露していたSな回し蹴りはバレエで培った技をアレンジしたのだね。オーディションで即興で踊った制服姿のバレエのシーン、素晴らしかった。それにしても岩井俊二監督はつくづく乙女だと思う。
| cinema | 2005.08.31 Wednesday 08:33 |